コラム 2018/12/10

|Déjà-vu的な!|#5 ぶつかる予感

#5 ぶつかる予感

目玉焼きは、いつまでたってもうまくならない。
ほんとうは、ふたをしないでじっくり焼いて、黄身が半熟になるくらいが好み。
だけどせっかちな私はふたをする。

朝ごはん

朝はひさびさにちゃんとした朝ごはんだった。
トーストと、ハムエッグと、カプチーノ(ちょっともう飲んじゃった)。
バナナとリンゴ。

事務所に忘れ物とりに行かなきゃいけないんだよなあと思いつつ、出かけない。
午前中のしめきりをぎりぎりで送信完了。
腕がひりひりする。
セーターをまくると、切り傷ができてちょっと腫れていた。

お昼ご飯は食べないで、車で陶芸教室に行く。
細かい雨が降っている。
お昼時はいつも混む道が空いていて、信号もひっかからず、今日はついているのでは!と思った。

今年に入って私が陶芸を始めたのは、欲しい器が自分で作れるようになったらいいなーという、よくある理由だけれど、習い始めてから、自分が器のことを何も知らなかったことを知った。
いったい器のどこを見てたんだろう。

今はまだ課題をひとつずつこなしていく段階で、つくりたいものはつくれない。
ひたすらまるい面、まっすぐな面、面と面が交わる角をつくっていくのだけど、実際私はそれに夢中だ。
やめどきを失うくらい。
ただ、すべらかに、なめらかに。ただそれだけを感じながら。
もはやトランス状態。
器の厚さ、底の重み、手に持ったときの重さと、見た目の重さのバランスは、目で見えているのに、さわらないとわからない。
そういうことを、想像してつくれるようにと、先生は指導してくださる。

お茶の時間

陶芸教室では、お茶の時間がある。
長年の会員のおばちゃまたちが、インスタントコーヒーを入れてくれて、お菓子を一緒に食べる。
お庭で採れたみかん、とれたてのマンゴーやとうもろこし(その場でゆでてくれる!)、手作りの栗羊羹なども登場する。贅沢。

お茶を飲みながら「やっぱりセンスが肝心なんでしょうか?」と聞いた方がいて、それに対して先生はこのようにおっしゃった。

「センスは最後の最後の最後。
もっといえば、センスがなくても作れるぐらいの力がそもそも備わっていないと、センスがあってもつくれません。
とにかくしっかりとした技術を身につけること。
そこまでできたら、センスのあるなし良し悪しに関わらず、焼きものとしてじゅうぶん成立します。
本来、焼きものというのはそれくらい懐が広い世界なんです。」

どんな世界でも同じようなことあるよなあ。
スポーツやお料理もそうだよなと思う。
知識とか理屈としてのそれではなくて、なぜそれが必要かを身体で理解する、体感するというか。型がしっかりできてから、みたいな。
なんでもつくれるようになる場所ではなくて、焼きものとは何かを知る教室だったのだ。

陶芸教室が終わったら、すこしだけ仕事先に寄って少しだけけいこさんと打ち合わせ。
年内の予定の確認など。
あずさちゃんの大好きなしいたけがいっぱいとれたから詰め放題よ〜!持って帰ってね!と。
いえーい!
しいたけを詰めていると、りかさんが、虫がついていないものを選り分けて、いいのをどんどん手渡してくれる。
や、やさしい・・・。

とっぷりと日が暮れ、家に帰ってくるとアパートの駐車場に、すんごいでっかいメルセデスが停まっていた。
それはうちのスペース側に大きく寄っていた。
ただでさえ狭い駐車スペースで、私はその高級車ぶっつけないことだけを考えて、慎重にハンドルを切った。
柱のある逆側のガードが甘かったことに気がついたのは、もちろん音が聞こえたからだ。
駐車し終え、なにもかもわかってますよってふうに車の後ろを見たら、思った以上に塗装が剥げていた。

ほんとうは、わかってた。
昼間ついてるなっておもったとき、なんとなくこうなる予感がしてた。
時間が戻ればいいのにってくよくよしてしまう。
しかし、メルセデスに当ててたら、こんな後悔くらいではすまない。
やはり、ついてるのかもしれない。

蟹だよ

金沢から届いた蟹を茹でる。
塩加減が超絶うまくいき、なにもつけなくてもおいしい。
日本酒買って帰ろうと思ったのに忘れてた。しくじった。
いいちこに柚子を絞ってお湯割で飲む。
ただもくもくと蟹を剥く。

 

 

Text&Photo: Azusa Hamaguchi

1975年生まれ。地方都市→東京→結婚して、わりと田舎へ移住。
フリーのグラフィックデザイナー。夫と二人暮らし。
お酒が好き。食べ物と暮らしを「妄想」するのが趣味。

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