コラム 2018/12/24

柚子の秘境を訪ねて(1/2)|どっちがいいとか。

高知県物部(ものべ)地区。

森林率88%という驚異的なエリアには、山と暮らす人々がいる。

ここは、日本有数の柚子の産地。

農林水産省の統計によると、主な産地は四国地方(高知県、徳島県、愛媛県)の3県で国産ユズの8割近くを占める。そして中でも高知県、そしてこの物部地区は加工されていない青果としての柚子生産量日本一のエリアなのだ。

イナカデリコは、田舎で大切に育まれてきた技術や作り手の生き方を学び、それを都会の忙しいライフスタイルに合う形に編集して届けることを大切にしている。

柚子の産地を訪ねた今回。

人々の暮らしは山とともにあった。

▲奥物部地区。昔と比べると物凄い勢いで減った柚子農家が、十数軒。日本の柚子を支えている。

自分たちで食べる野菜をつくる。

それで漬物を漬ける。

干し柿をつくる。

冷凍保存して年中食べられるようにする。

鹿を捕る。

山菜を採る。

大事に命を頂く。

おじゃこ(シラス)は、昔から貴重なタンパク源。

お寿司の酢飯にはおじゃこが入っている。

すし酢はもちろん柚子。柚子酢と書いて、「ゆのす」と言う。

寿司ネタは、たけのこ、しいたけ、ミョウガ、こんにゃくなど。旬の実りを生かした、土佐の「田舎寿司」である。

なんと美しいことか。

柚子を見に、山の暮らしを学びに来た面々でワイワイ食べる。

訪れた途端、柚子のことを忘れてしまうくらいの衝撃。目に飛び込むあらゆる物が、「これなに?」「わぁ凄い!」を連発させる。

この山に快く私たちを招き入れ、昔ながらの生活を特に特別だと感じさせることなく見せてくれ、ご馳走をしてくれたゆみさんに感謝しかない。

ゆみさんは、約10年前にこの地へ嫁いだ。暮らしにまつわるその知識量と、技量の豊富さから、実年齢の2倍は生きてるのではないかと疑うくらい、山暮らしのプロフェッショナル。

私たちはゆみさんを「仙人や!」と尊んだ。

気さくで、面白いことが好きで、勉強熱心で、家族をたてる謙虚さがある。町を歩いていても、声をかけられることが良くある。都会で有名な料理のプロや雑誌社の人からの取材依頼が絶えない。

ほんと、こんな現代人がいるのかと思わせられる、スーパーステキな山ガールである。

▲山暮らしや柚子について惜しみなく教えてくれるゆみさん(右)とイナカデリコバイヤーの浅野(左)

ゆみさんの暮らしは、朝支度から。夜明けとともに朝支度を始め、家族を迎える。

程なく旦那様は柚子の収穫へ。ゆみさんと旦那様のお母さんも一緒だ。収穫最盛期の11月から12月は、数名の従業員もやってくる。

8時頃から作業を開始し、黙々と柚子を採る。10時、12時、14時の休憩時間のために、コーヒーとおやつ、お昼を用意する。

暖をとるドラム缶の中の炭火では焼き芋が焼かれ、柚子果汁に蜂蜜を混ぜたオリジナルのジュースは、お湯で割って飲む。

自然とともに生きるとは、まさにこういうことだ。

こんな山暮らしが、近年東京オリンピックに沸く日本で、数百年前から当たり前に今もある。

このことがなんだか信じられない。

デパートもカフェも近くになく、もはやスーパーだって病院だって遠い。狭い土地を生かし、作物を作り、保存し、美味しく頂く。

こうやって日本はできている。

この暮らしから生まれる作物で現代人は食べていけている。

そう思うと、本当に尊い暮らしだと感じた。

都会暮らしと田舎暮らし。

どっちがいいとか、どっちが進んでるとかではない。

ただそこにある暮らしが、その人たちにとって当たり前の生活だというだけなのだ。

柚子について、産地について、まだまだ知らないことだらけ。

さて、いよいよ柚子収穫を体験しよう。

次回へ続く。

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